ttp://nazomoe.pun.jp/?%B6%EA%B2%D1%BF%B8%C2%C0%CF%BA
上記記事並びに無名世界観内にて、現在一般的に通説となっている
“「晋」と「光」共に太陽や光を指す言葉である。”
…という件につきまして、漢字辞典等を参照していて気になったので意見させて頂きます。
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この“晋”の字には字義的に“太陽・光に関する意味”は存在しません。
ウィクショナリー日本語版・「晋」
ttp://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%99%8B
類字は“進”とされ“しん”“すすむ”とする読み方及び意味であり、
中国語においても同様の扱いがなされます。
この“晋”という字の扱いは、歴史的に見ても大変古く、
最古の部首別漢字字典とされる“説文解字”(後漢頃に成立とされる)においても、
字義として“進むの意味である”とされています。
説文解字(Wikipedia):
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%AC%E6%96%87%E8%A7%A3%E5%AD%97
設文解字電子検索(中国語。上記事にも関連リンク有り):
ttp://ctext.org/shuo-wen-jie-zi/zh
↓(“晋”の記述内容)
巻八・日部・4182
日部: 晉:進也。日出萬物進。从日从"至至"。《易》曰:「明出地上,(旧字・至至+日)。」
但し、ここで説文解字は“日、出ずるより万物進む”“≪易≫曰く「明(易経では太陽を指す)地上に出ずる、晋」”としています。
これは“典拠を周易(易経)とする”事で“晋”という字の解説を行っているものであり、
ここで初めて“太陽との関連を伺わせる”事になります。
中国王朝(少なくとも宋代以前)において、周易(易経)は“四書五経”とされる統治者の聖典として位置づけられていたので、
辞書である説文解字が典拠としてこれを引く事に不自然な点はありません。
問題は、典拠である周易は、本来“爻(コウ)”という陰陽を“・・/―”と表す文様を、
三つ縦に重ねる事で表される“卦(ケ・カ)”(陰陽の3つ重ね=2の3乗で8卦、となる)を、
更に天地二つに重ねる(8卦の2乗で64卦)事で万象を示そうとする技法であり、
“著者が64種類の表れた文様をどう読み解くべきか”という観念論において、
“ある一つの卦”に対し“晋”…“地上に太陽が昇るように、万物が進む(晋む)”という“解釈を示した”事が、
“晋”という字に“太陽が関連する”事の根拠として扱われているという点になります。
#ちなみに“晋”卦を図示すると↓こんな感じです。
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・・
―
・・
・・
・・
このように、卦画を見ただけでは卦辞(卦の説明)に関わる情報は出て来ません。
通常は、周易の著者が“これを晋とする”と定めた卦辞を見る事で理解が及ぶものとなります。
また、上述の卦画において“太陽”とされるのは上の爻三つ…
―
・・
―
…で表される卦ですが、これは八卦における“離”、大元の意味としては火を表すものとされ、
転じた意味において“日=太陽”を指すものと“扱われる”という、かなり迂遠な意味合いとなります。
更に、説文解字は、周易におけるこれらの記述を以って“晋”という字は“日”と“至至(ジツ、と読む一字)”によって出来ていると解説していますが、
甲骨文・金文研究者である白川静氏の研究によると、
甲骨文・金文においてこの字は“曰(エツ。いわく、の字)”によって構築されていたと指摘しています。
“曰”の字は太陽とは関係が無く、説文解字の成立が後漢である事を勘案すれば、
説文解字の著者が“誤解に基づく記述をしていた”可能性も指摘されるものとなり、
“晋”の字が本来太陽とは全く関連しない字であった可能性が信憑性を得るものとなります。
“晋”(白川静氏の研究解釈に基づく)
ttp://増殖難読漢字辞典.com/honbun/zoukan-3f38.html
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以上の観点を踏まえると“晋”の字に太陽の意味を見出す事が字義的にはほぼ不可能であり
(部分的に“日”が入っている事も意味が追跡し難く、成り立ち上誤記が一般化した可能性がある)、
その意味を見出すには漢字、或いは中国古典のやや専門的な知識、または易という特殊な知識を踏まえて、
ようやく“間接的に提示出来る意味合い”となる事が指摘されます。
問題の記事には“晋”の字を当てた由来について公式回答のソースがありませんが、
この解説は“説明不要な一般的知識”とは言えないものであり、この解説が公式設定に対し妥当性を持つにしろ、
公式設定が全く別の意図を持つものであるにしろ、公開が許可されているものであれば公式発言に基づくソースの掲載が必要であると考えます。
以上、迂遠な指摘となりましたが、結論と致しまして、
“玖珂晋太郎の名前の意味合いについて、説明となる公式回答のソースが公開可能であれば掲載”して頂けますよう、
よろしくお願い致します。